室蘭市の青山剛市長は21日、市議会議員協議会で環境省から要請されている西日本で排出されるポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物が新たに見つかった場合の受け入れについて、「受け入れ条件を国が承諾することを前提に期限内での受け入れを受託する」と表明した。7月にも上京し、環境相に対し条件提示を行う意向を示した。
受け入れ理由では、15年にわたる安全操業の実績に加え、国が処理期限に変更ないと明言していることや代替事業に取り組むとしていることなどを挙げた。
また、青山市長は道と調整した上で「7月に伊藤信太郎環境相に対面で条件を提示する」と述べた。受け入れ条件は、事業の安全最優先や処理期限の厳守、解体工事での地元企業の活用など10項目とした。
市議からは「市の発展においても処理事業を最後までやりぬく必要がある」「国内からPCB廃棄物をなくすためにも取り組むべき」と表明に賛同する声があった。
一方、西日本から道に持ってくること自体、経済効率性から見ても「あってはならない。要請理由も明確ではなく受け入れがたい」との指摘もあった。そのほか、合意文書の取り交わしなどを求めた。
青山市長は協議会終了後、報道陣の取材に応じ、処理期限の再延長がないことなどを総合的に考え「受け入れは妥当との判断で結論を導いた」と説明。期限内の処理は絶対とし「(期限が)延長される場合は受け入れることはない」と強調した。
西日本エリアのPCB廃棄物は、大阪市や愛知県豊田市、北九州市の3事業所が、2023年度で処理事業を終了。同省は25年度末まで稼働する室蘭での処理について、国定勇人環境相政務官が来蘭するなど2度にわたり要請していた。
完全履行の確約が必須
【解説】環境産業都市を掲げる室蘭市の青山市長が、西日本で排出されるPCB廃棄物の受け入れを表明した。過去、幾度となく処理範囲の拡大や期限延長を要請された経緯もあり、今回の受け入れが最後となるのか、なお不信感は残る。
「環境貢献への理念や処理実績、安定性を考えると、受け入れの妥当性はある」。4日の定例会見で青山市長が語った通り、受け入れの方向性はすでに固まっていた。世界的にカーボンニュートラル(CN)や脱炭素社会が進められる中、再生可能エネルギーの有効活用を目指す資源循環型都市・室蘭にとって、今回の受け入れは妥当な判断といえる。
会見前日に国定勇人環境大臣政務官が室蘭入り。処理受け入れを直接要請したことで「流れは決まった。地元への経済効果もある」と地場産業界が指摘するように、安全性を担保した上で受け入れるべき-との考えは一定程度広がっていた。
処理施設の増設や対象地域の拡大、さらには東京電力福島第一原発周辺地域のPCB廃棄物受け入れの要請などが重なり、安全への不安に加えて、環境省の方針が都度変更され、市民の間で不信感が募っているのも事実。安全確保はもちろん、受け入れ条件の完全な履行について確約が必須だ。