発覚から今月で50年を迎える国内最大の食品公害「カネミ油症」の資料展が1日、長崎県庁1階にある県政資料閲覧エリアの片隅でひっそりと始まった。県は患者の認定や、被害者の無料検診を行うが、半世紀の節目に実施するのはこの企画のみ。初日は県庁職員や利用者がちらほら訪れる程度だった。被害者に配慮しつつ、いかに社会の関心を高めるかが問われる。

カネミ油症は北九州市のカネミ倉庫が食用油を製造した際、脱臭のために使ったポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入、熱で猛毒のダイオキシン類に変化したのが原因とされる。出荷先の西日本を中心に約1万4千人が頭痛や爪の変形を訴えたが、累計の認定患者数は今年3月末現在、全国で2322人にとどまる。2世への影響など未解明な部分も多く、今も不安を感じる人は少なくない。

県は1968年10月15日に「油の販売を停止する」と国から連絡があったことを受け、同月を「油症事件の発生」と位置づける。県による認定患者は死亡者を含めて964人と全体の4割を占め、全国で最も多い。

資料展では、吹き出物や爪の変形に悩む被害者の姿、救済を求める座り込みを記録した写真、油症を研究した本、裁判の経過を報じる新聞記事など34点を展示。事件の記憶が風化する中、県生活衛生課は「油症に関心や理解を深める契機にしてほしい」と話す。

ただ、会場は県庁の動線から外れた場所。担当者は「差別や偏見を恐れる被害者がいる。心情にも配慮する必要がある」と説明する。実際、未認定を含む約600人に被害者救済法に基づく検診の案内を送っているが、受診率は3分の1にとどまる。目立たぬ資料展は、半世紀たっても被害者を苦しめ続ける油症問題の根深さを反映している、とも言えそうだ。

展示は18日までの午前9時~午後5時45分(土日祝日は午後5時まで)。無料。

 
2018年10月2日 西日本新聞朝刊より